まつとしきかば
毎日ではないけど、ふと、リリィの写真を探したくなる時がある。そんな時は、過去年の「今日」の写真を探す。
まだ、つい、去年の今日のリリィを、探してしまう。リリィの代わりに、杢やガブがいる。胸がちくっとするが、だいぶ慣れた。
今、ふと、思いついて探したら、この連続写真が出てきた。2019年の6月、バスルームのカウンターへ飛び上がるリリィ。
あそこへ上がる、と決めて、狙いを定めて、ぽんっと跳ぶ。
きらきらの目目。艶々の黒い毛。
うちに迎えた時は、元気いっぱい、くるくる飛び回るやんちゃな子猫だったリリィも、お姉ちゃん猫が逝った頃からだんだん落ち着いてきて、深遠を見極めようとするかのように何かを見つめて、じっと静かに座ってることが多い猫さんになった。
そんなリリィもたまに活動的になり、とっとっとっとっ、と、仔馬のギャロップのようなご機嫌そうな小走りで、その辺りをひとしきり駆け回る。
そんなリリィをゆっくりと追いかけながら、画像や動画をたくさんたくさん撮った。幸せな日々。賑やかなイメージがあったけれど、よく考えたらリリィは静かな猫さんだったから、あの空間には、私の笑い声ばかりが響き渡っていたのだな。客観的に見るとかなりシュール。
今日はなぜ、リリィのことをこんなに考えるのだろう。
リリィの最期の日の、キョトンとした顔、きょろきょろっとした目を思い出す。
帰ってこいリリィ。
たち別れ いなばの山の 峰に生ふる
まつとし聞かば 今帰り来む
在原行平の歌。猫が出て行ったきり帰ってこない時に、唱えると良いと言われている。