毎日幸せを感じるために

幸せをもっともっと感じるために、毎日の気づきを書いていきたいと思います。

チッカーリングの門出

こんにちは、あんです。


一度は冷蔵庫へしまったバジルを、水に挿してテーブルへ。良い香りが漂います。


昨日、長い間数々の引越しに耐えてきてくれたピアノを、手放しました。
米国で手に入れたチッカーリング製のアップライトのピアノです。


小さいものも含めて7回の引越しについてきてくれたピアノ。8回目の引越しは、このピアノの新しい持ち主への引越しとなりました。新しい持ち主は、5歳のマドモアゼル。


私はピアノの専門ではないのですが、ピアノを弾くのは好きでした。小さい時から家にピアノがあるのは当たり前で、米国移住後一年ほど経った時に、地元のピアノ屋さんに中古のピアノを見に行き、とても軽いキラキラとした音を奏でるこのピアノを選びました。


もっと新しいしっかりしたピアノもありましたが、この古い(といっても1973年製)ピアノの音がとても好きになりました。高音の一部の弦が少し錆びて、いくつかの音がラスティックな響きがするのも、私にはいい感じでした。


手にも腕にも力が無くて、ベートーベンなど重厚な曲はもともとあまり弾きません。弾きたいけれど、途中で力が尽きる。なので、そういう曲は好きなところだけを取り出して弾いたりして、ほんとうにいつも、ぱらぱらと、ほんの手遊び(てすさび)で弾いていました。そういう弾き方にちょうどいい感じのピアノでした。


ずっと引越しについてきてくれていたのですが、2年半前にサンフランシスコに引っ越した時、家の造りが頼りなく、グランドピアノならともかくアップライトのピアノは重過ぎて*、床が抜ける心配が発生し、それからは貸し倉庫にしまっていました。


*グランドピアノだと、重みが三点に分散されるのでそれほど心配しませんが、アップライトだとすべての重みが一箇所に集中するため、床が沈んだりします。


たくさんの荷物とともに、誰にも弾かれることなく倉庫に放置されているピアノ。たまに倉庫へ行く時に、小さく蓋を開けて2、3個鍵盤を触るくらいしか、してあげられなかった。


1年くらい前から、もうどうしてもこのピアノに対して申し訳ない気持ちが膨れ上がりました。せっかくピアノとしてこの世に存在するのに、音を奏でてもらえない。私自身が10年ほど音楽から完全に遠ざかった時期があり、それがどれほど自分自身を自分らしく存在することから遠ざけていたかを思い知らされていましたので、これ以上、私が、このピアノの命を止める事はできないと思いました。


大好きなピアノでしたので、手放すことはそれまで考えたこともなかったのですが、だんだん、誰か弾いてくれる人のところへ貰われて行くほうが良いのだ、と考えるようになってきました。


この春のある日、友人のお嬢さんが、ピアノを始めるか、ヴァイオリンを始めるかで迷っているという相談を受けました。自分の家で練習ができないピアノよりは、手元に楽器を持っていられるヴァイオリンの方が良いのでは、と、先ずは提案しましたが、その直後、それこそビビッと、私のピアノが、このお嬢さんの手元へ行くような気がしました。


古いピアノがあるのだけれど…
貸し倉庫で埃をかぶっているのだけど…
弦もちょっと錆びてるけど…
でもとっても綺麗な音を奏でる、私の大好きなピアノなのよ…


提案してみると、話はトントン拍子に進み、そして昨日、ピアノはプロのピアノの運び屋さんにそれはそれは丁寧に運ばれて、新しい家へお引越ししました。


貸し倉庫を出る時に軽く埃を払ってやり、トラックにつみこまれるのを見届けて、私は一足先に友人宅へ。待つこと1時間あまり、ピアノがやってきました。


待っている間にチョコレートを食べ、手がベタベタになったお嬢さんに、「ピアノを弾く前には手を洗うのよ」とお話ししていたのですが、家の外にトラックが止まった気配を察知した彼女が、「ピアノが来た〜手を洗わなければ〜」とお手洗いに走って行ったのが可愛かった。


ピアノは、それほど汚れてもおらず、中にはほとんど埃が入り込んでいませんでした。
音もそれほど狂っていません。あのラスティックな音も全然気にならず。


明るい日差しが入り込む新しいお家で、ピアノはこれまでになく美しく輝いて見えました。お嬢さんとお兄ちゃん、パパとママの4人が、皆子供のように喜んでピアノを囲んでいます。



このピアノがここに辿り着くために、私はこのピアノを今まで所有していたんだなあと、しみじみ思いました。嬉しい気持ちで心が満ち溢れた午後でした。



昨日のリリィ。


私のiPadは彼に盗られそうです。


最後まで読んでいただいてありがとうございました。
今日も良い1日をお過ごしになりますように。

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